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AI-as-a-Serviceが中小企業にも公平な競争をもたらす

私たちは「デジタルの力によって強化されるインテリジェンスの時代」に入りつつあり、多くの企業が、そこに驚異的な可能性を見出しているのではないでしょうか?

たとえば、コーヒーチェーンであるスターバックスでは、顧客が欲しいものを、欲しいと感じる前に予測できるように人工知能(AI)を利用しようとしています。また、報道機関であるAP通信社は、AIを利用して企業の四半期決算に関する記事を1年に数千本も「執筆」しています。コールセンターにはチャットボットが導入され、あらゆる言語の問い合わせを認識し、その応対に利用されています。企業は、幅広い分野にわたり、顧客の動向を事前に予測するためにAIを活用し始めています。

中小企業へのAIに関する価値とは

AIとは、システムが自然言語を理解し、画像を認識し、学習、予測、対応できるようにする技術の総称です。 Tata Consultancy Servicesによる調査によれば、一般的なイメージとは対照的に、AIリーダー達の考えるAIは「自ら走行する車、自ら掃除するバーベキューグリル、自ら補充する冷蔵庫」を指すのではないのです。

AIができることは、多くの基本的なタスクを自動化することで、業務を最適化し、顧客体験を向上させることです。

データサイエンティストであり、deepPiXELの事業成長を牽引する部門を統括するトルグト・ジャッバーリ(Turgut Jabbarli)氏は、企業方針に関する応対やパスワードのリセットといった例を強調し、AIによって現在人間が行っている処理の最大80%を軽減できると述べています。こうしたタスクをAIによって自動化することで、より効率的な処理が可能になり、従業員は、より付加価値の高いサービスに業務を集中させることができるようになります。

もう1つの例は、小売店が予測分析を活用し、販売スタッフを最も効率的に配置すること、または、インテリジェントなデジタルエージェントを活用し、顧客の要望に迅速かつ効果的に対応することです。これらは、「理想的な顧客体験」をもたらすためには不可欠であるという調査報告もあります。

こうした例は、特にリソースが不足している中小企業の共感を呼ぶかもしれません。しかし、このリソース不足こそが、AIが秘める可能性から中小企業を遠ざけている要因になっているのです。

AIという障害を乗り切る

AIのハードウェア要件は、決して些細なものではなく、AIを支える十分なITインフラを持たない企業は、その恩恵を受けることができません。

顧客の質問に最適な答えを出す場合も、必要な人員を正確に配置する場合も、AIシステムが意図された結果を生み出すには、特定のタスクをトレーニングさせる必要があります。そして、このトレーニングを十分に生かし、正確な予測に結び付けないとなりません。しかし、こうしたプロセスには本格的なハードウェアと専門知識が必要になります。

Googleは数年前、人間の顔と猫の顔を認識するようにAIシステムをトレーニングする実験を行いました。その学習プロセスには約16,000のコアプロセッサーが使われましたが、実際、このようなITリソースを自由に使える企業は多くありません。

また、データの問題、むしろデータの不足という問題があります。AIシステムの性能は、AIシステムをトレーニングするために使われるデータ量に依存します。SearchCloudComputingのシニアサイト編集者であるクリスティン・ナップ(Kristin Knapp)氏とSearchAWSのサイト編集者であるデヴィッド・カーティ(David Carty)氏は、「AIの価値は、注ぎ込むデータ量に比例する」とTechTargetの記事で強調しています。つまり、ITシステムの性能は、プログラミングを繰り返すのではなく、データを参照させることで、機械学習によって経時的に向上するものであると述べています。

ここでもまた、正確かつ効率的なAIシステムを開発し、トレーニングする上で、十分なデータを生成できないという現状が多くの企業の障壁になっています。

AI-as-a-Serviceでレベルアップする

クラウドサービスとしてのAI(AI-as-a-ServiceまたはAIaaS)が登場したことで、そうした問題が大幅に解消され、競争が公平になり、あらゆる規模の企業がAIを活用できるようになります。

クラウドモデルの明白な利点の1つは、コンピューティング負荷の高いAIジョブを実行するために不可欠な専用ハードウェアの調達、管理、保守の必要性がなくなることです。クラウドの場合、大きな設備投資の必要がなく、キャッシュフローにも比較的に負担をかけない支払いモデルを利用し、AIや他のワークロードのデマンドに合わせてリソースを容易にスケーリングすることができます。

AIaaSとしては、サービスプロバイダーが開発、トレーニング、チューニングしたアルゴリズムを備える、あらかじめパッケージ化されたAI機能だけでなく、通常の中小企業が利用できるものよりも、はるかに大きいデータセットへのアクセスも提供しています。

また、クラウドに常駐しているAIaaSにより、ソーシャルメディアや現在急成長しているオープンデータなど、クラウドソーシングによるデータを利用することもできます。たとえば、シンガポールのポータルサイトであるdata.gov.sgでは、政府機関が公開している約70のデータへのワンストップアクセスを提供しており、企業は、こうしたデータセットを利用することで、AI機能を構築、トレーニングすることが可能になります。

試験的に導入してAIの可能性を見極める

企業がAIを導入するにあたり、AIaaSを活用することで、大きな障壁をもう1つ乗り越えることができます。それは、AIにできること、できないことについての理解不足という障壁です。Thorn Technologiesの最高マーケティング責任者であるマイク・チャン(Mike Chan)氏は、「その技術に何ができるのかを理解していないなら、それを機能させることもできないでしょう」と指摘しています。

こうした点で、クラウドがAIに最適な理由の1つは、高い初期コストを必要とせずに、AIの検証を容易にするハードウェアやソフトウェアリソースを利用できることです。ナップ氏とカーティ氏は、Aragon Researchの主任アナリストであるエイドリアン・ボウルズ(Adrian Bowles)氏を引用し、「多くの企業が依然として機械学習、予測分析、自然言語処理といった技術の潜在的な使い道を探究している段階だ。この段階では大きな金銭的投資やリスクを伴わない検証環境が求められている」と述べています。

パブリッククラウドを試験的に利用することで、AIを低コストで導入し、AIアルゴリズムの実行や微調整に必要なリソースにアクセスし、AIにできることを確認し、そして「失敗するか拡張するか」いずれかの対策を講じることも可能になります。

現状を把握する

多くの企業は現在、予測分析から視覚情報処理、音声認識、翻訳にいたるまで、さまざまなサービスをAIaaSとして提供しようと先を争っています。また、マーケティング、農業、スポーツ分析といった幅広い分野で、特定のビジネスニーズに特化したAIaaSを提供するベンダーも生まれています。

クラウド上でAIを利用する事が可能になりつつある今、あらゆる規模の企業が、こうした技術を検証し、活用できるようになりました。この流れに遅れを取っている人が追いつくのは、今後ますます難しくなるかもしれません。

Appier編集部

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