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日本の人工知能研究者を紹介する 「AIタレントインタビュー」シリーズ 第3弾 配信開始 

機械学習の応用で防災・減災を可能に 日本の自然災害の問題に対してAIを活用して解決
チーフAIサイエンティスト ミン・スン × AIP副センター長 上田修功氏

AI(人工知能)テクノロジー企業のAppier(エイピア、共同創業者/CEO:チハン・ユー、以下Appier)のチーフAIサイエンティストであるミン・スンは、理化学研究所革新知能統合研究センターの副センター長で、NTTコミュニケーション科学基礎研究所特別研究室長も務める上田修功氏と、昨今の自然災害を踏まえ、AI研究の防災への応用について対談しました。その内容を抜粋し、発表します。

■ 機械学習の研究は防災につながる

ミン・スン:理化学研究所革新知能統合研究センターでの研究について教えていただけますでしょうか。

上田修功:日本の深刻な社会問題である自然災害対策に貢献したいと考え、防災科学チームを立ち上げました。防災科学技術研究所や気象庁と連携して、私の専門分野である機械学習の防災・減災への応用について研究しています。

ミン・スン:残念ながら、日本には地震や津波、そして最近の台風と自然災害があるので、防災にはより精巧な技術が求められますね。具体的にはどのような研究をされていますか。

上田修功:最初に実施したのは、地震被害の推定に機械学習を応用する研究です。地震被害を事前に推定することは、建物やインフラの修復に重要で防災にも役立ちます。

ミン・スン:機械学習を用いて街の規模で分析を行なうことで、災害が発生する前に修復工事が必要な場所を判断し、政府から知らせることができるわけですね。

上田修功:地面に杭を打つボーリングにより、3次元の地盤構造データを作成し、そのデータと地震の物理モデルを用いて任意の場所での地震動を計算機シミュレーションにより推定することができます。しかし、ボーリングの場所は限られており、しかも得られた地盤構造データも不正確なため、モンテカルロ平均を計算するのに膨大な回数のシミュレーションが必要でした。

そこで、機械学習を用いて、数回のシミュレーションデータをもとに、3次元地盤と地震動の関係を学習させることで、地震動を推定する方法を確立しました。これにより極めて効率的な推定が可能になり、総計算量を1000分の1に圧縮することに成功しました。

■ 機械学習研究には従来の研究成果との融合が必要

上田修功:また、機械学習を応用し、地震の発生時期を予測する研究も行っています。従来の発生予測で使われる物理モデルには、非常に多くの未知の変数があり、この変数を専門家が手動で設定していました。これらの変数はロケーションによって異なるため、専門家といえどもこれらの変数を設定するのは現実的に困難でした。

しかし、未知の変数にはある範囲での候補値があるため、これらの候補値をモデルに代入してシミュレーションすることにより地震の人工データを得ることができます。得られたデータを用いて地震データと変数の関係を学習させることにより、地震データから未知変数を逆推定することが可能になります。従来のモデルベースアプローチとデータ駆動型アプローチの融合により、防災研究においても優れたパフォーマンスを得ることができました。

ミン・スン:これはAppierも使っているアプローチです。我々は、従来のデジタルマーケティングアプローチを行う専門家の評価を取り入れながらデータポイントを生成します。しかしこの方法は拡張性が低く、それほど正確ではありません。そこで従来のやり方を機械学習のデータ駆動型アプローチと組み合わせて、スケールアップを行い、予測をより効率的により正確にしようとしています。多くの科学分野で応用できるアプローチになると思います。

Appier について

Appier は、AI(人工知能)テクノロジー企業として、企業や組織の事業課題を解決するための AI プラットフォームを提供しています。

過去のインタビューをご覧いただけます。

「第二弾: カナダ、ボリアリス AI リサーチディレクター グレッグ・モリ氏との対談」

「第一弾: 理化学研究所 兼 東京大学 杉山教授との対談」

  ミン・スン プロフィール

2005年からGoogle Brainの共同設立者の一人であるAndrew Ng(アンドリュー・エン)氏、元Google CloudのチーフサイエンティストであるFei-fei Li(フェイフェイ・リー)氏などのプロジェクトに携わり、AAAI(アメリカ人工知能学会)をはじめ世界トップの人工知能学会で研究論文を発表 2014年に国立清華大学の准教授に就任 2015年から2017年には、CVGIP(Computer Vision Graphics and Image Processing)Best Paper Awardsを3年連続で受賞。専門分野は、コンピュータビジョン、自然言語処理、深層学習、強化学習 2018年には「研究者には肩書きよりもデータが必要」と感じ、AIテクノロジー企業AppierにチーフAIサイエンティストとして参画。新製品の開発、既存製品の機能改善のほか、記述的な課題解決を行う

上田修功 (うえだ なおのり)プロフィール

NTTコミュニケーション科学基礎研究所 フェロー・上田特別研究室長、機械学習・データ科学センター代表、 科学技術振興機構(JST) 数理的活用基盤 CREST研究総括、 京都大学大学院情報学研究科 連携教授、 神戸大学大学院システム情報学研究科 情報科学専攻 知能統合講座 客員教授、 理化学研究所 革新知能統合研究センター 副センター長 1984-1991年:画像処理、画像認識、コンピュータビジョンの研究に従事、 1991年より、統計的学習理論とパターン認識への応用に関する研究に従事。一貫して数理的アプローチに基づく学習アルゴリズムの構築を行っている。複雑かつ多様なデータからの機械学習の理論およびアルゴリズムの研究に関し2018年文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。2016年より理化学研究所革新知能統合研究センターにて機械学習の医療、防災・減災への応用に関する研究に従事。 2019年12月3日プレス PDF版

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