― まずは、「BRANZ(ブランズ)」について教えてください。
田中:BRANZは、「環境先進を、住まいから。」というコンセプトを掲げ、デザイン・クオリティ・サポートという三つの柱を軸に、お客様と環境の双方に配慮した住まいを提供しています。
― いわゆる「高級志向のマンションブランド」という印象ですが、ターゲット層としてはどのようなお客様を想定されているのでしょうか。
池田:環境や社会課題を住まい選びの重要な基準と捉えている方々です。トレンドやライフスタイルへの感度が高く、ご自身の価値観に自信を持ち、それを大切にされている印象があります。
田中:何度もBRANZをご購入いただくリピーターの方もいらっしゃいます。住み替えを繰り返すことで、新しいライフスタイルを楽しんでおられる印象です。そうした方々に、いち早く新規物件の情報をお届けできる体制を整えることも、我々の大切な役割の一つです。
― マーケティング活動で重視している取り組みがあれば教えてください。
池田:Webサイトへの集客を起点に、エントリー(資料請求)を経て物件へご来場いただく流れを想定しています。その中で、重要な役割を担っているのが「BRANZ e’ Salon」です。「仮想(オンライン)合同サロン」をコンセプトにしたWeb上の相談窓口「BRANZ e’ Salon」は、従来の物件ごとの縦割り構造とは異なり、複数物件を横断的に閲覧・比較できる仕組みです。地域や価額帯などの条件から最適な物件を探せるだけでなく、チャットやオンライン相談にも対応。検討初期から継続的にお客様とつながる場として活用しています。
― お客様にとっては、かなりスムーズな体験になりますね。
田中:そうですね。マンション購入は検討期間が長く、複数の物件を比較検討するケースが一般的です。だからこそ、お客様が自然な流れで情報を得られ、興味を持ち続けていただけるような仕組みづくりが大切だと考えています。「BRANZ e’ Salon」は、そのための重要な基盤になっています。
― マーケティング活動におけるお二人の役割を教えてください。
池田:私は、分譲マンションの販促施策を担当しています。BRANZのプロモーション活動全般のなかでも、特にWeb領域における情報発信や、「BRANZ e’ Salon」を活用した顧客接点の設計にも取り組んでいます。
田中:私はグループリーダーとして、グループ全体の戦略を見ながら、現場を担う池田のプロジェクトをサポートしています。
― インフィッシュさんの役割を教えて頂けますか。
大森:弊社(インフィッシュ)はもともと、東急不動産様からWeb広告の運用やSNS活用支援の仕事をご依頼いただいていました。課題を共有いただくところから一緒に検討を重ね、Web UIの提案から運用支援まで、幅広く施策をご一緒しています。BotBonnie導入では、代理店としての役割を担いました。
― お話をうかがっていると、一方的な依頼と受託の関係ではなく、かなり密な連携があるように感じます。
池田:まさにその通りです。私たちは、BotBonnieの運用を「ブラックボックス化」させず、自社でしっかり理解し、ハンズオンで活用したいと考えています。ですので、インフィッシュさんには、単なるアウトソーシング先ではなく、戦略設計の段階から伴走してもらっています。
田中:お客様のエンゲージメントを高めるには、ブランド理解とユーザー視点を共有できるパートナーの存在が欠かせません。インフィッシュさんとは、そうしたマーケティング視点をともに持てる関係性が築けていると感じています。
大森:ありがとうございます。東急不動産さんは、中長期的な視点で丁寧に対話を重ねながらも、実行力とスピード感を兼ね備え、常に新しいアイデアと最先端のDX戦略に挑戦されています。そんな皆さまとご一緒できることは、私たちにとって非常にやりがいのある機会となっています。
― BotBonnie導入以前、どのような課題を感じていたのでしょうか。
田中:新築マンションは高額な商品ですので、BRANZのWebサイトにご来訪いただいても、エントリー(コンバージョン)に至るまでに、どうしても心理的なハードルがあります。エントリーの段階では、住所や年収といったセンシティブな個人情報の入力が求められるため、離脱ポイントになってしまうケースが多く見受けられました。
池田:定期的にKPIとして数値を追っていましたが、エントリー率は平均して0.1%程度でした。流入数自体はある程度確保できていても、 コンバージョンにつながらない。不動産に興味があり、そのエリアで物件を探している可能性が高いにもかかわらず、接点を持てないまま離脱してしまうのは、非常にもったいないと感じていました。
大森:そもそも高額商品なので、簡単にはエントリーいただけません。一般消費財と比較して一件の重みが違います。そのような中で離脱する人をどうにかしたいというところから、広告出稿に際してエンゲージメント率の高い媒体を選定する、あるいはトップページの見栄えを変えるなどの対策に取り組みました。ただ、やはりそれだけでは離脱率の劇的な改善にはつながりませんでした。
池田:それ以外には、MAツールを導入して定期的にメールマガジンを配信しており、開封率は約40%と高かったのですが、それは裏を返せば60%の方にはリーチできていないということです。つまり、メールというチャネルだけではアプローチしきれない層が一定数いるわけで、そうした「取りこぼし」も一つの課題でした。
大森: Webプッシュ通知も試みましたが、配信の母数が増えず、一度アプリ化も検討しました。しかし、開発や運用のコスト、利用のハードルを踏まえると、現実的な選択肢ではありませんでした。そこで、「もっと日常的に使われているチャネルを活用できないか」という声が上がり、LINEの活用を検討し始めました。国内での利用率が非常に高く、高い開封やお客様にとっても日常的に接触できることが期待でき、ユーザーとの接点を継続的に持つ手段として有効だと考えたからです。
― 具体的にBotBonnieの導入を決めた背景を教えてください。他のツールも検討されたのでしょうか。
池田:LINEとInstagramの両方に対応し、なおかつ一元管理が可能なツールを条件に、いくつかのツールをリサーチしていました。そこで大森さんに相談したところ、BotBonnieを見つけて来てくれました。BotBonnieに決めたポイントの一つは、運用のしやすさです。シナリオ作成のUIが非常に使いやすく、私たちのような非エンジニアでも直感的に扱える印象でした。
田中:それから、各SNSに網羅的に対応できる「拡張性」 です。将来的なチャネル拡張も見据えられる点に魅力を感じました。ユーザージャーニーマップの操作性も良く、サイト訪問前の行動やチャット内のやり取りも一元的に把握できる点は、マーケティング施策を考えるうえでも大きなメリットだと思いました。
― 代理店の立場から見て、BotBonnieを採用する上で魅力に感じた点や、サポート体制についてどう評価されていますか。
大森:今回、BotBonnieをクライアントに提案したのは初めてでしたが、導入時のAppierのサポートが非常に丁寧で、質問にもすぐに対応いただけたのは安心感がありました。クライアントである東急不動産様の要望にも柔軟に対応でき、運用しながら仕組みを一緒に改善していける点にも魅力を感じています。Appierの担当者は、こちらの課題を先回りして考えたうえで提案してくださるなど、伴走力の高いパートナーだと感じています。代理店としても安心してクライアントへ提案できるツールです。
― 導入した効果をどのように評価していますか。
池田:BotBonnieの導入から約2か月で、LINEの友だち登録数は200件ほど増加しました。これまで接点を持てずに離脱していた、不動産に強い関心を持つ訪問者をつなぎ留めることができた点で、大きな意味があると捉えています。すでに複数のエントリーにもつながっており、CVR(コンバージョン率)の向上にも手応えを感じています。現在は一部の物件のみでの展開にとどまっていますが、今後はタワー型物件など、まだLINE対応が進んでいない物件群にも活用を広げ、成果の拡大を目指していきたいと考えています。
― エントリーの離脱へ対応するために、BotBonnieをどのように活用していますか。
池田:離脱しそうなタイミングを検知し、「無料診断コンテンツをご利用いただけます」といったバナーでLINE登録を促しています。自然な形でアプローチすることで、ユーザーの関心を妨げないよう工夫しています。間取りページをじっくり見ているユーザーには、ポップアップではなくチャットボットで案内を表示することも今後やりたいと思っています。またエントリーフォーム上では、入力を妨げないよう配慮しつつ、フォーム下部にさりげなくLINE登録の案内を表示。エントリーに至らないユーザーを取りこぼさない工夫です。
― LINEを使ったコミュニケーションでは、どのようにお客様との関係を深めていますか。
池田:「価額表を更新しました」などのタイムリーなお知らせをLINEで配信することで、再訪問やエントリーのきっかけをつくっています。こちらから一方的に情報を送るのではなく、お客様の関心や行動に合わせてアプローチできる点が、BotBonnieの大きな強みだと感じています。
― 今後、BotBonnieやLINEの活用について、どのような展望をお持ちですか。
田中:大阪市内では複数の物件をご案内しているのですが、現状ではそれぞれに個別でエントリーしていただく必要があり、お客様にとって少し手間に感じられる場面もあるかと思います。そこで現在、AppierのAIを活用した対話型の営業支援機能「セールスボット」の導入を検討しています。たとえば、梅田の物件をご覧いただいたお客様に、天王寺の物件もあわせてご紹介するといった形で、より自然なご提案が可能になると考えています。営業担当の業務負担を軽減するだけでなく、エンゲージメントを高めることにもつながるのではないかと期待しています。
― まさに、顧客起点のブランド体験ですね。
田中:はい、その点でも、BotBonnieは手を動かしながら改善していけるのが良いですね。運用しながら「より良い体験」に近づけていけるのが大きな強みだと感じています。
池田:私たちが提供したいのは「マンション」ではなく「暮らしそのもの」です。BRANZは、「すべての人が、健やかに気持ちよく暮らせる未来を実現すること。」を目指しています。BotBonnieの取り組みは、その入り口のコミュニケーションをより自然で、親しみあるものに変えていくための一歩だと考えています。
・田中氏 東急不動産株式会社 住宅事業ユニット 関西住宅事業本部 販売部 関西営業企画グループ 兼 事業戦略部 DX推進グループ グループリーダー |
・池田氏 東急不動産株式会社 住宅事業ユニット 関西住宅事業本部 販売部 関西営業企画グループ 兼 事業戦略部 DX推進グループ 主任 |
・大森氏 株式会社リアクティブデザイン 代表取締役 兼 インフィッシュ株式会社 取締役 |